【対談】日本のクリエイティビティで、美しい未来を。和菓子D2Cブランド「Misaky.Tokyo」三木アリッサがエードット布施に語る、マーケティング戦略とは<後編>

 

※この記事は「【対談】日本のクリエイティビティで、美しい未来を。和菓子D2Cブランド「Misaky.Tokyo」三木アリッサがエードット布施に語る、マーケティング戦略とは」 の後編です。前編はこちら

 

Forbes JAPAN 地球で耀く女性100人に最年少で選抜されたこともある、三木アリッサさん。そんな彼女が昨年9月、新しいLVMHグループの創設を夢に、LAにてラグジュアリーな和菓子のD2Cブランド『Misaky.Tokyo(ミサキトーキョー)』を立上げました。『Misaky.Tokyo』は現在、シュレックなど手がける「ドリームワークス」本社やトランプ大統領保有の高級ゴルフクラブにて販売されており、立ち上げから短期間でアメリカでのシェアを広げつつある人気ブランドです。

一方、広告会社の電通Y&Rから巷で話題の家族型ロボット「LOVOT」の開発・販売を手がけるハイテクスタートアップ企業GROOVE X、現在はエードットへとキャリアを重ね、入社直後の今年4月には「#SafeHandFishプロジェクト」を手がけた布施優樹。実は布施とアリッサさんのお二人は、偶然の出会いによって、『Misaky.Tokyo』立ち上げ前からの知り合いであるといいます。

そこで今回は、LAを拠点に活躍されているアリッサさんが一時帰国したタイミングで布施との対談を実施。アリッサさんの新事業『Misaky.Tokyo』がなぜ短期間で人気ブランドとして軌道に乗ることができたのか。布施が今まで培ってきた「マーケティング」や「PR」の目線と、アリッサさんらしいざっくばらんな会話の中から、その秘密を解き明かしていこうと思います。

 

三木アリッサ

Forbes JAPAN 地球で耀く女性100人最年少選抜(2018)/ Business Insider Japan Game Changer 2019

1992年生まれ。早大法学部在籍中にプリザーブドフラワー専門ブランド立ち上げに参画し、楽天ナンバーワンブランドに育てる。卒業後外資系メーカーにその企業初の学卒マーケターとして採用されCRMを担当。その後、日本酒ベンチャーで新ブランド立ち上げや、伝統工芸品ECの新規事業立ち上げに参画。さらにはイスラエル専門商社にて、新規事業開発Mgとして、過去最高売上の12倍を半年で更新。現在日本のLVMHの創設を目指して、ロサンゼルスにて和菓子D2C「Misaky.Tokyo」立上げた。シュレックなど手がける「ドリームワークス」本社での販売他、トランプ大統領保有の高級ゴルフ倶楽部にて30社ほどしか選ばれない公認ベンダーの一つにも認定されている。

Misaky.Tokyo 公式サイト:https://misaky.tokyo/
Misaky.Tokyo Instagram:https://www.instagram.com/misaky.tokyo/

布施優樹

エードット Executive Communications Director

電通Y&R在籍中に獲得したカンヌライオンズ、Spikes Asia 2つのグランプリをはじめ、国内外で多数の受賞歴を持つ。2016年11月、大型資金調達で話題になっていたスタートアップ、GROOVE Xに単独自主プレゼンを敢行し、翌年同社に参画。同社の家族型ロボット「LOVOT」のブランドパーパス、CI/VI、マーケティング、異業種コラボレーションなどを担い、LOVOTの出荷を見届けて退社。2020年2月より現職で事業企画からクリエイティブまで一気通貫で手掛ける。直近では「#SafeHandFishプロジェクト」をスタート。

 

(左)布施優樹 (右)三木アリッサさん

 

日本とアメリカの中間地点を探しながら、「なぜそれが好きで選びたいか」を丁寧にコミュニケーションする。

 

布施優樹(以下、布施):これ、全部アリッサさんが手作りしてるってほんとですか?

三木アリッサさん(以下、アリッサ):そうです!実は会社を立ち上げた当初は、職人さんにお願いしてレシピ開発をしてみたのですが、うまくアメリカナイズできなかったんです。職人さんにも堂々と「この形じゃないと売れません」と言えるまでは、自分でできることから始めようと思い、まずはYouTube見ながら頑張ってつくり始めたんです。今も私がキッチンに立って1つずつ手作りしていますが、今まで自分が培ってきたマーケティングの知見を活かしながら、味や形をどんどん改良していっています。これがね、ほんと美味しいんですよ!ちょっと食べてみてください。

 

実際に食べてみる布施

 

布施:ん!ほんとだ美味しい!

アリッサ:でしょ!ちゃんと味も美味しいし、食感もわざと1つずつ変えてるんですよ。着色料も0で、全部天然のものです。理科の実験にみたいに砂糖を5g単位で変えたり、温度を1℃ずつ変えたりしながら、日本人にとってはちゃんとした甘さ、アメリカ人にとってはナチュラルな甘さ、って言うどちらにも好かれる味を探していきました。つくるのに手間がかかってるんだけど、手間がかかってるってお客様にも分かっていただけるから、高くてもちゃんと売れるんです。日本って売るために値下げをするけど、むしろ逆!いいものは、ちゃんと高く売らないと。

 

見た目も食感も1つずつ異なり、こだわりを持って丁寧につくられていることがわかる

 

布施:なるほど、確かにそうですよね。

アリッサ:日本のいいものを “This is made in Japan!” みたいなコミュニケーションで海外進出させる企業が多いのですが、それはナンセンスなんじゃないかと思うんです。例えば「ロシアからマトリョーシカがきました!可愛いでしょ!」って、言われても日本人からしたらピンとこない。だから私はアメリカに進出する上で、「なぜこのブランドが好きなのか」「なぜこのブランドを応援しないといけないのか」と言う理由づけを丁寧に行うようにしました。そういう意識は特に日本よりアメリカの方が強いと思ってて、それはおそらく教育の差なのかな、なんて。

 

布施:教育の差?

アリッサ:日本は「先生についていけ」って教育じゃないですか。でもアメリカの場合、「自分の意見をいえ」って教育なので、小さい時から何度も「自分は何が好きで、なぜそれを選びたいのか」って言う意思決定を何度も繰り返してるんでしょうね。だから、日本とは逆で流行は作りづらい。だけど確実にファンはどこかにいる。そのファンがどこにいるのかを探り当てて、育てて、大きくして行く、っていうのをしっかりやれば失敗はしないんじゃないかなって思います。

 

例え話が上手なアリッサさん。笑いの絶えない対談でした。

 

共同創業者は64歳のおじいちゃん。強力なパートナーと共に実践した、アメリカでのマーケティング方法。

 

布施:そう言えば、共同創業者の方とも面白いご縁なんですよね?

アリッサ:そうなんですよ。共同創業者は64歳のおじいちゃん。彼はカプリチョーザとか、ハードロックカフェとかを運営しているJASDAQ上場企業でのアメリカ子会社を立ち上げて、CFOになられて、当時700人くらいの従業員を束ねていたような人なんです!出会いはめちゃくちゃ面白くて…私の家の大家さん(笑)最初、起業した時はLAに知り合いなんてゼロ。そこでたまたまハウスメイト募集の書き込みを掲示板で見つけて、「いいじゃん!」って思って入居したら、そのおじいちゃんの家だったんです。

 

布施:へえ〜ミラクル!

アリッサ:そう、ミラクル!実はアメリカにきた当初は、自分の英語が伝わらない、文化も商習慣もわからないで、精神的にボロボロになってしまったんです。そんな時、彼が献身的に助けてくれた。だからこの人がいないとダメだと思って、一緒に会社をやろうと口説いたんです(笑)映画「マイ・インターン」みたいな感じで、彼は私に倫理や哲学といった大切な部分を教えてくれるし、マネジメントについても全部アドバイスしてくれます。今では強力なメンターでありパートナーですね。

 

布施:その存在は頼もしいですね。

アリッサ:初めて彼に『Misaky.Tokyo』のプロトタイプを見せたとき、「これは面白い」って思ってくれたらしいんです。でね、おじいちゃんだけど飛び込み営業もするんですよ。ドリームワークスの本社や、トランプ大統領のゴルフクラブに置いてもらえたのも彼のおかげ。ブランドとして箔が付くような部分を彼が営業でどんどん取っていってくれたし、年齢関係なく、様々な部分で助けてもらっていますね。

 

布施:ドリームワークスに、トランプ大統領のゴルフクラブ…。当たり前のようにお話されてましたけど、まずはじめに「その時、キーとなるコンタクトポイントにアプローチしていく」というマーケティングが自然とできていますよね。LOVOTの仕事をしていた時に多くのスタートアップ企業と出会いましたが、けっこうそういうマーケティングが苦手だったりする。その点アリッサさんはマーケティングの感覚が身についてるから、短期間でもこのように軌道に乗せられてるのかなって思いますね。

 

アリッサ:ありがとうございます。うちはファーマーズマーケットも出しているのですが、儲けるというよりは市場調査の意味合いが強いです。ゆくゆくは職人さんをアメリカに呼んで、アメリカの食材で商品開発して、できたものをうちが買い取って製造する、みたいなことをしたいと思っています。そのためには、お客さんに直接販売する機会がないと、職人さんにとってハッピーじゃないですか。さらにマーケティングの話をすると、「脱日本人をする」というのも1つの目標でした。もちろん日本人の方にはたくさんご支援いただいているのですが、アメリカにいる日本人40万人だけをターゲットにしていたら今後スケールしていかない。だからこそ「どうやってアメリカ人に愛されるか?」というのを、丁寧に探していきましたね。 

 

 

文化を受け入れてもらうための「カリフォルニアロール」になる。美しい未来をつくるために、私たち一人一人ができること。

 

布施:今後、僕たちの会社の案件をご相談させていただきたいくらいです。

アリッサ:海外展開だったらいつでも聞いてください。結局大事なのって、プロダクトマーケットフィットじゃないですか。お客さんにどうフィットさせるか。それって、ひたすらトライアンドエラーを繰り返していくしかないと思っていて、だからファーマーズマーケットも毎週展示を変えてみたり、POPを変えてみたりと、日々改善し続けています。私ね、日本は嫌いだけど、好きなんですよ。

 

布施:嫌いだけど、好き?

アリッサ:帰国子女として日本に来て、苦労もしたし嫌なこともたくさんあった。それでもやっぱり日本の人も文化も大好きだから、日本にある良いものはちゃんと後世に残してあげたいって思うんです。大人なんだし、それくらい責任持ちたいなって、かっこいいこと思っちゃったの(笑)私が今やってる『Misaky.Tokyo』も「これは和菓子と呼べない」「日本の恥だ」なんて言われてしまうこともあるし、プレッシャーを感じてしまうこともあるんですけど、それ以上に皆さんからたくさんのエールをいただいているので、ここまでやって来れたのだと思っています。

 

布施:僕もアリッサさんのお話を聞いて、応援したい!って気持ちになりました。

アリッサ:ありがとうございます!例えば私が小さい頃、アメリカで海苔を食べていると「なんだあの黒い紙は」と、変なものを食べているかのように見られました。だから、当時は人前でおにぎりを食べるのが恥ずかしかったの。でも少なくともこの20年で、その認識はガラッと変わりました。寿司がアメリカに浸透するまでには何十年もかかりましたが、そのきっかけを作ったのは実はあの「カリフォルニアロール」なんですよ。

 

布施:やはり、そうだったんですね。

アリッサ:そう、文化を変えるには何十年もかかる。だから最初は「これが和菓子なの?」と思う人がいるかもしれないけれど、和菓子にとってのカリフォルニアロールみたいに、文化を受け入れてもらうためのきっかけになれば良いなと思っています。まあ、やりたいことはいっぱいあるし、新しいLVMHグループをつくるための道のりはまだまだ長いけど、次に向けて準備をしているところなので、楽しみにしていてください!

 

布施:はい、ほんとこれからが楽しみですよ。そして、今後どこかでクロスできる部分があると良いなと思いました。

アリッサ:結局は運と縁だなと思っています。布施さんと出会ったのも、大切なご縁ですから。それと自分の中で大切にしてる言葉があって、それが「適材適所」。私は外でやるのが得意だけど、むしろ日本国内が不得意だから(笑)でもね、オールジャパンじゃないとやっていけない時代なのなら、それぞれ得意なことをパズルみたいにはめて、みんなでうまくやっていけば良いと思うんです。ネガティブな足の引っ張り合いはやめて、みんなでうまく浮上していく。みんなで強力しながら、楽しく、一緒に美しい未来をつくっていけたら嬉しいです。

 

アリッサさん、ありがとうございました!

 

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