本との出会いは、新しい自分との出会い-内馬場希

 

みなさんこんにちは、2020年エードット新入社員の内馬場 希です。今回は、私の人生に影響を与えた本と漫画について紹介させていただきたいと思います。

突然ですが、みなさんにとっての「忘れられない一冊」は何ですか?

それはどういったジャンルの本でしょうか。

私にとっての「忘れられない一冊」は複数あるのですが、それらはジャンルも方向性も実に様々で、ですがどれも人に対するあたたかな眼差しに満ちたものです。この場で紹介する本の数々が、みなさんの心にも何かを残すことを願ってやみません。

 

弱さを抱えたまま生きたっていい。

 

フルーツバスケット/高屋奈月(白泉社) 

 

人生のバイブルです。私の人生に一番影響を与えた漫画と言って過言ではないと思います。

唯一の肉親であった母親を失って天涯孤独となった高校生の少女・透は、ひょんなことから学園の王子様・草摩由希をはじめとした草摩家の人々と関わりを持つようになります。しかし彼らには、異性に抱きつくと十二支の動物に変身してしまうという秘密があって…!?

といったあらすじ。これだけ見るとドタバタラブコメディの色が強いようですが、中身は重厚なヒューマンドラマです。主人公を含む沢山の人々が葛藤を抱え、乗り越えられない壁に直面し、それでも前を向いていく過程には読者の心もきっと勇気づけられるはず。

 

私が『フルーツバスケット』と出会ったのは、小学5年生の時です。その頃転校したばかりだった私は、環境の違いから戸惑うことが多く精神的にかなり苦労したことを覚えています。そんなとき、私を支えてくれたのは本屋でたまたま見かけた少女漫画―――『フルーツバスケット』でした。

主人公たちとは年齢も境遇も違うけれど抱えている悩みは同じであるように思えて、次第にその世界にのめり込んでいきました。何と言っても『フルーツバスケット』は名言の宝庫なのです。印象的な台詞をいくつかピックアップします。

 

「例えば人の素敵というものが オニギリの梅ぼしのようなものだとしたら その梅ぼしは背中についているのかもしれません(中略)誰かを羨ましいと思うのは 他人の梅ぼしならよく見えるからなのかもしれませんね」(コミックス2巻)

上の言葉に限らず、この漫画に登場するすべての言葉たちに共通するのは、人の弱さに寄り添う優しさだと思います。自信をなくし他人のことばかり羨んでしまう弱さ。苦手なものの前で足がすくんでしまう弱さ。それでもいいのだと、『フルーツバスケット』は背中を押してくれます。弱さを抱えたまま生きたっていい。一緒にがんばっていこう、と。

 

「急に強くなれた訳じゃない 何かが変わった訳でもない まだ震える体 だけど 立ち向かっていこう?大切なのは 弱さ故の向上心」(コミックス5巻)

こちらの台詞は、学校でいじめを受けていた女の子が主人公たちとの触れ合いを通して再び前に進む決心をした時のモノローグです。

 

この漫画を読んでいたとき、主人公ほどではありませんが、私も人間関係がうまくいかず学校では疎外感を覚えていました。もっと心を強く持たなければ。挫けちゃいけない。そう思うほどに立ち上がるための力が奪われていくようでした。ですから「弱さ故の向上心」―――この言葉を漫画の中で見つけた時、「この言葉は私に向けられているのだ」と感じました。このままの私でがんばればいいんだと感じた途端、肩の力が抜けていくようで、単語一つひとつがすっと心の中に染み込んでいくのがわかりました。

印象的な台詞の数々は今も私の心に残り続け、そして支えになってくれていると感じます。今の私を支えてくれる、力の源でありバイブル。それが私にとっての『フルーツバスケット』です。

 

頭が良くなるって素晴らしいこと?

 

アルジャーノンに花束を/ダニエル・キイス(早川書房)

 

この小説は、知的障害を持つ青年・チャーリィの日記という形で綴られています。

パン屋で働く心優しいチャーリィは知能を劇的に向上させるという脳手術の被験者第1号に選ばれ、手術は成功、彼は瞬く間に天才へと変貌を遂げていきます。アルジャーノンとは彼より先に実験を受け、同じく高いIQを手に入れたハツカネズミの名前です。しかしチャーリィは知能の向上と共にかつて障害者であった自分を取り巻いていた残酷な現実を知ることとなり、また天才である現在の彼も孤独に苛まれるようになるのでした。チャーリィとアルジャーノンを巡る物語は、やがて予想外の結末へと導かれていきます…。

 

私がまず衝撃を受けたのは、小説の文体です。実在する知的障害者の方の文章を 参考にしていると思われるような、そしてチャーリィの知能の変動と共に変化していくリアリティある文章からはこの物語がサイエンス・フィクションの名作と呼ばれる理由がわかります。

そしてチャーリィの心の変容ぶりです。チャーリィがこの物語の中で経た「純粋で幼い時期」と「理性的に自分を客観視するようになる時期」、この2つの時期は私自身にも覚えがあるもので、後者を経たことで世界は広がったと感じるものの物事を斜めに見てしまう自分に虚しさを感じる面もあります。

物語の後半、チャーリィはかつての自分と今の自分が入れ替わるような錯覚を覚えます。2人の自分は感覚的に「違うもの」であり、そのギャップが彼を苦しめるのです。

境遇は異なれどこの感覚は私にも理解ができると感じました。幼い頃の自分が取ってきた行動を振り返ると顔から火が出るようです。当時の私はそんな行動の数々を「楽しい」と思い、今の私はそれを「恥ずかしい」と思うのです。羞恥心は私を社会へ適応させたのかもしれませんが、果たしてそれが自分という人間にとって良いことばかりだったのかと考えると疑問が残ります。純粋さを心に抱いたままこの世界を知ることはあまりに難しい、そんなことを思います。

 

読後、胸が詰まるような思いで考えました。「人間が本当に大切にしなければならないものって何なんだろう?知能は人を幸せにはしてくれないのか?」と。この問いは今もなお、私の中で燻り続けています。

それでも理性と感情とのあいだで折り合いをつける道を模索し続けるのが、私たちに課せられたミッションなのかもしれないと思います。私の「知」に対する価値観に深く影響を及ぼした、そしてきっとこれからも及ぼし続けるであろう、忘れられない一冊です。

 

ゆっくりと滅びへ向かう、未来の楽園。

 

タイムマシン/H.G.ウェルズ(岩波書店)

 

乗れば未来へ飛び立つことのできる夢のマシン。皆さん一度はそんな空想をしたことがあるのではないでしょうか。

科学技術が発展し、人々は空中を走る未知の乗り物に乗り、AIと共存して暮らす世界…しかし本作で描かれるのはきっとそんな未来よりもずっと先、紀元802701年のお話です。

当時小学生だった私は、この本を読んで衝撃を受けました。そこには今まで想像していたような輝かしく発達した文明も知的な未来人たちの姿もなく、牧歌的で小さな集落と、退化に向かう少女のような人類の姿があるのみでした。

彼女たちは簡単な言葉を話し、平和で、子どものような知能を持っていました。そしてもう1つ、地下には彼女たちを喰らう獰猛な―――しかしやはり人間によく似た生物が潜んでいました。彼らの対立は根深く、楽園の滅亡がそう遠くないこと指し示します。

繁栄を極め、やがて滅びに向かっていく。あらゆる生物の宿命と言えるものですが、幻想を挟まず真正面から描き切るその姿勢に私は鈍器で殴られたような感覚を覚え、齧り付くように本を読み進めていったのでした。

主人公である科学者は未来人たちとの波乱に満ちた日々を経て、やがてもっと先の3000万年後の世界へと辿り着きます。そこには既に人類の姿はなく、真っ赤に膨張した太陽が地上すぐ近くに迫り、不気味な生物が地を這う地獄のような光景が広がるばかりでした。

 

この物語が何を伝えたかったのか?

現代では、これはSFというよりも風刺小説に過ぎないという意見もあるようです。未来に住む少女たちと地下に棲む獰猛な生物との闘いは、作者が生きた時代を反映しているのかもしれません。

しかし私にはこんな世界がそう遠くない未来本当に訪れるような気がしてなりません。考え続けることをやめれば、私たちは簡単に捕食される側へと回ってしまう。だからこそ強い意志を持って未来を築き上げていく覚悟が必要なのだと思います。

技術が進歩したというニュースを聞くたびに、私はこの小説を思い出します。果たして自分たちは恩恵にあずかるだけの無力な人間になっていないだろうかと。私の中の未来観を180度変えてしまった一冊です。

 

星の世界への扉、開いてみませんか?

 

石井ゆかりの星占い教室のノート/石井ゆかり(実業之日本社)

 

タイトルの通り、星占いの本です。といっても「あなたは〇〇な性格です」と一方的に示すだけのものではなく、占いに関する用語をまとめた占星術学習者にとってのテキストのような一冊。

執筆するのは占星術師兼ライターの石井ゆかりさん。雑誌上やインターネット上に数多くの連載を持っていらっしゃいます。

以前このエードットジャーナルで、私の自己紹介記事を書いた際にもお話しさせていただいたのですが、私は幼い頃から占いを趣味としておりこの本も勉強の一環として購入したものです。そしてこれは私にとってブレイクスルーのきっかけとなる一冊でした。

 

占いの知識においてもそうですが、まずは石井ゆかりさんの豊かな表現力に感服させられました。例えば、石井さんはホロスコープ(星占いに使う生まれた時の星の配置を示した図)について

「そこから先の未来が、植物の種子のようにぎゅっと詰まったもの」

「それが、種子が双葉を出して伸びていき、個性的な花を咲かせるように、未来に向かってどんどん展開していく」

と説明しています。占いの専門用語ひとつとっても、植物の種子に置き換えることで、ぐんとわかりやすく想像が膨らみます。このように『星占い』を身近で夢のあるコンテンツとして紹介する姿に私は尊敬の念を抱きました。

そして、私もいつか人の想像力を刺激するような文章を書きたいとライター職に対する夢を膨らませるきっかけにもなったのです。実際に、SNS上に占いについて自分が学んだことを発信するアカウントを作成するなど具体的な行動へ移すにも至りました。今後は星占いに留まらず、様々な分野で魅力的な文章を発信できたらと考えています。

 

ここでは人生に影響を与えた一冊ということで『石井ゆかりの星占い教室のノート』を選びましたが、同著者の『星読み+』(幻冬社コミックス)や『星の交差点』(イースト・プレス)についても同じく感銘を受けたということでタイトルを紹介させていただきます。星占い関連の他にも多数エッセイを書いていらっしゃるので、興味のある方はご覧いただければと思います。

 

本との出会いを楽しもう

 

さてここまで「私の人生に影響を与えた一冊」について、少女漫画、SF小説、専門書と様々なジャンルから紹介させていただきました。どれを取っても私のその後の価値観や行動に影響を及ぼしてきた大切な一冊たちです。

本を振り返ることは、自分の人生を振り返ることだと思います。

本と出会うことは、新しい自分と出会うことだと思います。

これからも機会があれば、私の人生や新たな出会いについて語る場として、本を紹介していきたいと考えています。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

(執筆:内馬場希、編集:風間夏実)


この記事は、2020年エードット新入社員研修の中で書かれたものです。これからも弊社新入社員をどうぞよろしくお願いいたします。また、現在エードットは一緒に働く仲間を募集しています。エードットの採用にご興味お持ちの方は、ぜひ下記のリクルートサイトよりご応募ください。お仕事のご依頼・ご相談もお待ちしております。

 

エードットグループへのお仕事のお問い合わせはこちら!
株式会社エードット
TEL:03-6865-1323
FAX:03-6865-1325
Email:info-pr@a-dot.co.jp
採用募集へのご応募はこちら
オンラインお問い合わせ窓口はこちら

▼関連記事▼