ドラマ化決定!の「左ききのエレン」は、広告に興味ある学生は必ず読むべき2億個の理由(ネタバレあり)。

(この記事は、作者であるかっぴーさんの了承を得て作成されております。)

エレンのドラマ化があまりに嬉しくて、勢いあまっておかしなタイトルをつけてしまいました。実際に分解していけば2億個くらいあるのですが、みなさんのお時間もあると思うので3つくらいに整理してお話したいと思います。

僕が同世代で、嫉妬するクリエイター、たくさんいるのですが、たぶん一番嫉妬しているのは「かっぴーさん」です。歳はたしかひとつ違い。同じ広告業界にいて、これほど嫉妬する才能は他になかなか知りません。

「左ききのエレン」は2015年にnoteでスタートし、2016年 cakesで連載開始、 2017年リメイク連載開始、2019年10月にテレビドラマスタートと、WEB世界ならではのサクセスストーリーを歩んできています。(最初のほうがすごく大変だったとかっぴーさんも言ってましたが)「広告業界」を描いた物語、これほど業界を描き切った作品はおそらく初めてだと思います。

僕は連載当初からの生粋のファンで、Twitterでことあるごとに触れてきました。今は 続編の「左ききのエレン HYPE」が連載中であり、これまた主人公の光一が同世代ということもあって、自分の仕事として重ねて相乗効果で面白く、生きる希望のひとつと言っても過言ではありません。

さて、左ききのエレンの何が面白いのか。書きながら整理してみようと思います。

  1. 広告業界の描き方がマトを射すぎ
  2. クリエイターに関する名言が多すぎ
  3. ストーリーテリングがうますぎ

2億個の理由をKJ法でまとめると、上記三つが浮かび上がってきました。

1. 広告業界の描き方がマトを射すぎ

「左ききのエレン」は現代の広告業界が舞台なのですが、業界内部の描き方があまりにも緻密です。かっぴーさんの洞察力と言語化(漫画化?)のスキルの高さに嫉妬します。「これ、舞台博報堂じゃないんですか?」ってかっぴーさんに質問をしたら「そう思ってもらえたらんなら僕の勝ちですね」(意訳)と言われました。それくらい「あー博報堂もこんな感じだったわ」という腑におちるシーンがあまりに多くあります。

もう冒頭からして「あるある」なシーンです。プレゼン前に寝てしまって、起きて絶望するところから物語がはじまります。上司からの連絡がきていることはわかってもスマホをみることができない、そんなことがきっとあなたにもあったでしょう。そして左ページのように、いかに末端デザイナーが末端にいるのかという組織的なことまで教えてくれます。親切です。

 つぎはこちら。「営業vsクリエイティブの構図」です。これもよくある話です。クリエイティブ部署の人間は、時間にルーズだし、服装もなぜか自由だし、仕事に「予算がない」とかケチつけるし、と営業が怒るのも無理ありません。ちなみに、流川はまじかっこいい営業です。

個人的に、「かっぴーさん、よくぞ書いてくれた」というシーンがこちら。広告代理店「CD多すぎ問題」です。CD=CREATIVE DIRECTOR で、広告業界のクリエイティブではかなりエラい(すごい)人のはずなのですが、正直、CDが渋滞してます。その理由は下の画像にあるように「部長」と同じような「役職」化してしまっているからです。「いらんねん いらん いらん 大量リストラや 半分でええ アホに絶望して辞めるんちゃんうのか?」うんうん。

というようにですね、今「広告業界の内情を知るなら」エレンを読めば大枠のことはわかります!広告業界に興味のある人は必読であります!

2. クリエイターに関する名言が多すぎ

僕は、ちょっと制作のモチベーションが下がったときとか、元気を出すときにエレンをパラパラと読みます。そしてわかりやすく勇気づけられて、再度デスクに向かうのです。「クリエイターを鼓舞する名言」が多すぎるのです。

その名言を生み出す代表は「柳CD」と「神谷CD」のふたりです。

俺の好きな名言No1 「ぼく人間ちゃうわ デザイナーや」という柳CDのセリフ。この仕事、賛否はあると思うのですが、まじでこういう仕事です。死ぬ思いで全力でやった人だけが、名を残すことを許される。それは、もはや「仕事」というものですらなく、ほぼ「人生」に等しいことです。「普通の人生じゃ やだよ」と主人公が語るように、特別な人生をつくるために、死ぬ思いでやるのだ、という表現に勇気をもらいます。

次も同じようなシーンですが、名言「明日死ぬつもりでつくる・・・ただそれだけのことがなぜ出来んのや!!!」「何か残して死ね」です。あまりに強烈なひとこと。こういう生き方は賛否があると思うのですが、「何かを残す」ということはそれくらい過酷で大変なことだと改めて思い知らせてくれるシーン。

同時に、「なぜ我々はそこまでして過酷な道を選ぶのか?」ということに対する答えにもなりそうな次のシーン。「俺たちは夢の世界の裏方だ」「大人になる事よりもクリエイターになる事を選んだんだ」このシーンは涙無くしては語れません。

もっともっとたくさん「クリエイターを鼓舞する名言」がありますが、ネタバレしすぎるとあれなので、ぜひみんな読んでみてください!

3.ストーリーテリングがうますぎ

これ、かっぴーさんに一番嫉妬するポイントです。ストーリの運び方がうますぎる。僕もかなりの量、漫画を読んできているタイプですが、このストーリーの運び方は、ハンターハンターの冨樫に匹敵するレベルだと思っています。まじで感動します。

あまり絵で表現できないところなのですが、「左ききのエレン」は何人もの主人公といくつもの時代とシーンが折り重なってできています。高校時代、大学時代、代理店の若造時代、そしてアメリカ編があり、現代編もある。

これだけ様々なシーンがあるのに、そこに矛盾がまったくない。むしろ「そこまで伏線用意してたのか」と後になって感動することばかりです。一巻でエレンが会見しているときの服装や隣にいる人物まで、あとで綺麗に回収されていたり、ちょっと頭の構造がどうなってるのか疑うレベルですごいです。

かっぴーさんは、ストーリーテリングの天才だと思います。言葉の使い方もすさまじいです。名言などの「点」も最高に面白いのですが、それをつなぐストーリーという線がこれまた緻密で太いのです。

というわけでぜひ読んでほしい

昔、かっぴーさんと「エレンを語る会」ということでツイキャスさせてもらったときがあります。そのときに、「あの先輩の山下さんいるじゃないですか」って言ったら「僕よりも光一よりも、覚えてますね」とお墨付きをもらったくらいのファンです。

そのときに、「エレンを実写化したらエライザさんしかいないですよね!」と話をしました。三年前くらいです。それがこうやって現実になる、その作品外のストーリーも半端じゃなりません。最高です。ドラマ楽しみです。

そして僕はこの「出演者募集」に応募しているので、そのうち「牧野」というキャラクターがでてくるはずです。どんなキャラでも楽しみです。「あの、牧野って代理店辞めたやつ、最近名前きかねーな」みたいなキャラであろうと、この物語に登場することには意味があると思っています。

最後に、かっぴーさん、ほんと最高の物語をありがとうございます。エレンのおかげで、僕がこの業界で頑張る理由がひとつ増えました。これからも楽しみにしています!